唐木について
唐木について蘊蓄を一つ
現在唐木と言われる材料は花梨、紫檀、タガヤサン、黒檀等を言います。この中で一番高価なのは花梨の瘤で、玄関に置く衝立や応接室のテーブル等に加工されています。
次に高価なのは、タガヤサン。手元に端材が一本ありますが、勉強不足でこの材の工芸品を見たことがありません。正倉院の宝物の中には加工品があるようです(成田寿一郎著 木の匠 木工の技術史)。
戦前は、黒檀を使った座敷机があったと聞いています。しかし、この材は細かい割れが発生しやすく、使われなくなったそうです。現在では寄木や、象嵌に使われているのではないかと推測されます。タガヤサンと共に希少価値の高い樹木です。
唐木の比重は0.8~1.0あり、中には水に沈むものも有ります。緻密で堅いため、釘やネジは効かず、そのため組み手と糊で製品にしていきます。加工には一般の材に比べ、より正確な精度が要求されます。
紫檀
紫檀は、唐木の中でも特に高級材料として、工芸品に使用されます。欧米では、ローズウッドとして、高級家具の材料として使用されています。
日本では仏壇、座敷机、花台、棚等に使用されますが、高級材であるため偽物が多く、似たような材に、紛らわしい名をつけたもの、着色してそれらしく見せたものなどが多くあります。
私の知っている紫檀は、本紫檀と、手違紫檀の二種類です。私個人としては、手違紫檀の方が、その木目模様、削ったときの艶など好みですが、希少価値と言うのか、本紫檀の方が高価です。成長しても、直径が30センチ前後と、広い板は取ることができません。
花梨
花梨は最も一般的な唐木で、比較的値段も安く、扱いやすい木です。他の唐木に比べて、成長が早いのか、或いは個体として大きな木なのか、大径木が多く、幅広の板材を取ることが出来ます。そのため5尺(1500×900)用の、座敷机の天版を一枚板で取ることが出来ます。ただ、唐木の中では材質はやや粗く、緻密さに欠けます。
工房の唐木
当工房には、私が親方から譲りうけた唐木が、花梨を中心に約2年分の仕事が出来る量が置いて有ります。この材は、私の親方が二十五年前、大阪唐木工芸の会社をたたんだ時、それまでのストックを残して置いた物です。座敷机用に半加工されていて、それを再利用して、花台や勉強机を制作しています。
将来
唐木工芸の将来について、これは非常に厳しものがあります。これから、材料がどんどん輸入されるということは考えられません。また、購入するにしても、非常に高価なものとなり、私たちのように、小さな工房では手に入れることが不可能になります。
そのため、今ある手持ちの材が無くなり次第、当工房の唐木工芸は、終了になります。
しかし、その前に唐木の製品が一般の人に対して、売りにくいという状況があります。以前はどこの家にも座敷があり、お客を迎える部屋にはそれなりのしつらえがありました。今はハウスメーカーが工場で作る住宅が主流となり、しかも床の間を設けた座敷は姿を消してしまいました。